公開日:2022年3月22日
介護施設でも大事な手指衛生
介護施設のご利用者には、高齢の方や基礎疾患のある方が多く、抵抗力も低い可能性があります。また、新型コロナウイルスの流行により、施設での感染対策は今まで以上に重要となっています。
今回は、感染対策の基本、「手指衛生のポイント」についてご紹介します。
厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」には、感染対策の3つの柱(病原体(感染源)の排除、感染経路の遮断、宿主の抵抗力の向上)を実行していくためには「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」や「感染経路別予防策」と呼ばれる基本的な対応を徹底することなどが必要との記載があります。日々のオペレーションの対策として挙げられている「標準予防策」は、以下の3つを守りながら、適切なタイミングで正しく手指衛生を実行することが重要となります。
<標準予防策>
- 感染の有無にかかわらず、血液などの体液(汗を除く)は、感染性があるものとして素手で扱わない
- 粘膜面も素手で扱わない
- 正常でない皮膚(発疹や傷など)には素手で触らない
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引用文献:厚生労働省老健局,2021,『介護現場における感染対策の手引き 第2版(令和3年3月)』
正しい手指衛生のポイント
正しい手指衛生のポイントは、①手指衛生の手順を理解し、②適切なタイミングで手指衛生を実施することです。まずは事前のチェックで、手指衛生の準備を確認しましょう。
<事前のチェック>
- 手洗い場に必要な備品は準備されていますか?(ハンドソープ、手指消毒剤、使い捨てペーパータオル)
- 手洗い場に温水は出ますか?
- 手指消毒剤は適所に設置されていますか?
- 爪は短く切ってありますか?
- 手荒れはありませんか?
- 手洗い時、時計や指輪は外していますか?
衛生的な手洗いの手順
当社が推奨する衛生的な手洗いの手順とポイントをまとめました。
<手洗いのポイント>
- ハンドソープをしっかり泡立てましょう。泡がきめ細かいほど、効率的かつ少ない摩擦力で汚れを除去できます。
- 1度洗いよりも2度洗いが効果的です。
- 洗い残しが生じやすい箇所は特に注意しましょう。
- しっかりすすぎましょう。すすぎには物理的な除去作用があります。
- 手洗い後の水分をペーパータオルで拭い取りましょう。
- 手洗い後は、水道栓に直接触れず、肘かペーパータオルをかぶせて締めましょう。
- 手洗い後の手指消毒の工程で消毒剤の有効成分が薄まらないよう水分をしっかり拭き取って行いましょう。
衛生的な手指消毒の手順
<手指消毒のポイント>
- 消毒剤はたっぷりと手に取り、手指全体にいきわたらせることが重要です。(使用量の目安は3ml/回です)
- まず指先と爪から擦りこみましょう。
適切なタイミングとは?
介護施設のケアにおける感染予防では、「1ケア1手洗い」が基本です。
<タイミング>
- ハンドソープを用いた流水による手洗い(スクラブ法)
目に見える汚れがある場合、トイレの後、排泄介助の後、血液などの体液、嘔吐物などに触れた後、食事介助の前後、使い捨て手袋の着用前後
- 手指消毒剤による擦式法(ラビング法)
- 目に見える汚れがない場合(例:パソコンやドアノブなどのコンタクトポイントに触れた後)
<ポイント!>
- 手荒れは細菌増殖の原因や外部からの病原体侵入のリスクを高めますので注意が必要です。過度な手洗いは手荒れを招くおそれがありますので、手洗いと擦式法をうまく使い分けるとよいでしょう。1)
- 保湿剤配合の薬剤選定、ハンドクリーム使用など、日頃からスキンケアを意識しましょう。
- 手洗い場が近くにない場合は、消毒剤の設置箇所を増やし、必要な時に手指衛生ができる環境を整えましょう。介護職員が消毒剤を常時携帯するのも効果的です。
- ハンドソープや消毒剤が空にならないよう、残量チェックも忘れずに行いましょう。
引用文献
1)CDC , 2002, "Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings"